第81回句会

第81回「りんどう句会」報告

(2024年2月26日(月)鎌倉芸術館会議室にて開催)

第81回句会は12名の出席、2名の欠席投句、1名の見学参加者(松本賢悟さん)で全45句の出句、15名による選句でした。当月の兼題は吉崎明光さん出題の春の季語「入学試験」です。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                          

今月の最高点は、藪野詠子さんの春月に夫を見舞ひてひとりぼちで、9点を獲得し

ました。季節は春になったけれど、ご主人の入院で一人で帰宅するのは寂しいという心情が表現されており、同じような経験のある人もまた経験は無い人でもこれは他人事とは思えないという多くの共感を呼んだようです。

 次は8点を獲得した2句で、山田伸子の「マチネーへふんはり纏ふ春ショール」および吉崎明光さんの「涅槃西風(ねはんにし)指揮棒胸に征爾逝く」です。「マチネーへ」の句については、句全体から春の柔らかい光が匂うようで、お洒落できれいな句だという選評が選者から語られました。

 また、「涅槃西風」の句には、季語がこの句にぴったりだというコメントが各選者から述べられました。この句の季語は「涅槃西風」で、釈迦が入滅した頃に吹く季節風のことで、春の始まりを告げて吹く風という思いが込められているそうです。この時季に他界した指揮者小澤征爾の死を悼んだ句としてこの春の季語が選ばれたのは、大変相応しいという選評でした。

次回は3月25日、兼題は浜崎かづきさん出題の「風車」です。兼題1句と当季雑詠2句をご用意ください。

 当句会への新規入会あるいは体験参加希望の方は、鎌倉稲門会事務局あてメールでお問合わせください。

【今月の高得点句(同点句は兼題優先)氏名は俳号 (一部修正)

(9点句)  春月に夫を見舞ひてひとりぼち        藪野詠子

(8点句)  マチネーへふんはり纏ふ春ショール      山田伸子 

       涅槃西風指揮棒胸に征爾逝く         吉崎明光

6点句)  そよと来てそつと撫でゆけ春の風       鈴木金平 

(3点句)  八十路過ぎ入試の夢を見なくなり       藪野詠子

       校門の雪にツルリと受験の日         石川一洋 

       受験子の自信に満つる面構へ         福田くにもと

       受験子の祖母も気忙し寺社巡り        田村昌恵

       雨音に茶の香を添へて炉の名残        千葉ふみこ

       能登時雨割るる珠洲窯なほ崩す        福田くにもと

       春寒や猶も戦火の収まらず          石川一洋

鳥交る恋に恋せし遠き日々          北村拓水

(山田伸子記)