第73回「りんどう句会」報告

73回「りんどう句会」報告

2023626日(月)鎌倉芸術館にて開催) 

20176月に当句会発足以来、毎月欠かさず句会を開催、当月で7年目に入りました。前回見学者も正式に入会し、会員は15名となりました。益々充実した同好会活動を目指して行きます。

今回も全員参加(内1名はメール投句)、合計45句の投句がありました。当月の兼題は鈴木金平さん出題の初夏の季語「羅(うすもの)」。歳時記では、「紗、絽、上布など、薄く軽やかに織った織物、また、それらで仕立てた単衣(ひとえ)の総称」との説明があります。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 

鈴木真砂女(まさじょ)の「羅や人悲します恋をして」という名句を超える句が披露されるかどうか、大いに楽しみにしていました。

「羅」の似合う父の思い出を詠んだ句(千葉ふみこさん、藪野詠子さん)や、母を詠ん

だ句(手島廉雲さん「うすものを羽織る姿や母想ふ」)などが皆さんの共感を呼んだようです。安藤宗幸さんの「羅の僧はバイクで荒稼ぎ」もこの時期よく見る光景ですが、面白いですね。日常生活の中で発見した面白い光景を句にする、これも俳句の楽しみです。

そのほか、2点以下ではありましたが、次のような句も話題になりました。

「羅着(き)いざ手弱女の戦場(いくさば)へ
」(鈴木金平さん)、「うすものの内なる愁ひ透かしをり」(福田くにもとさん)、「羅を愛の如くに着こなして」(石川一洋さん)、「羅の襟元合はす佳人かな」(山田伸子さん)、「うすものやいつしか妻の顔となり」(吉崎明光)など。

7点句の鈴木金平さんの句、「梅雨寒や隣の嫁は戻らぬか」は、「梅雨寒」という季語に取り合わせた事柄が何ともユニークで俳諧味たっぷり(隣の家では深刻でしょうが)、まさに金平さんワールド全開の句でした。

15名の会員の個性が発揮された句がこれからもどんどん生まれてくることを期待しています。

次回は731日(月)、鎌倉芸術館会議室で13時から16時まで。兼題は「風鈴」(藪野詠子さん出題)。兼題1句と当季雑詠2句をご用意ください。

なお、当日は句会終了後、暑気払い(懇親会)を予定しています。

当句会への新規入会あるいは体験参加希望の方は、鎌倉稲門会事務局あてメールでお問い合わせください。

【今月の高得点句(一部添削後。同点句は兼題優先)氏名は俳号

   10点句) 羅の似合ひし父やセピア色        千葉ふみこ 

  (7点句) 梅雨寒や隣の嫁は戻らぬか        鈴木金平

   (4点句) 羅の僧はバイクで荒稼ぎ         安藤宗幸

          偏屈も有りかと思ふ捩れ花         田村昌恵

         キッチンを風抜けてゆく梅雨晴間      山田伸子

         残照の火の剣となる夏至の海        石川一洋

    (3点句)羅を粋に羽織りし(ちち)の背な         藪野詠子

         味噌煮にす鯖下す手に染みひとつ     千葉ふみこ 

            もの足りぬ膳に一皿冷奴          高吉よしえ

           黴の書に半券二枚付きしまま        吉崎明光

           泡いくつ吐けば咲き切る水中花       浜崎かづき 

                          (吉崎明光記)