第83回「りんどう句会」報告
(2024年4月29日(月)鎌倉芸術館会議室にて開催)
第83回句会は12名の出席、1名の欠席投句で全39句の出句、13名による選句でした。当月の兼題は高吉よしえさん出題の春の季語「囀(さえずり)」です。
今月の最高点は、前川たくさんの「種ばれの卒寿の手品山笑ふ」。今年卒寿を迎えられ
る前川さんをお祝いする会の席上、ご親族の前で、ネタはとっくにバレている手品をご本人が得意げに披露しているという、お目出度くも微笑ましい句です。季語の「山笑ふ」がとても効いています。
・同じく8点句の田村昌恵さんの句の「花筵」とは、お花見の宴席に使う筵を言います。
愛犬に「お座り」と言ったら、近くに寄ってきたどこかの小さな子も一緒に「おすわり」してしまったという、これもまたいかにも春らしい明るく微笑ましい句です。
・6点句の浜崎かづきさんは、弘前の見事な桜に出会った思い出を詠みました。「かくも美し」にその感動が表現されています。
・5点句の田村昌恵さんの「囀り」の句、読経(どっきょう)していた覚園寺のご住職(同窓の方)の声がまことに素晴らしかったとのこと。
・渡辺伊世子さんの「老桜(ろうおう)の」の句。梶井基次郎の『桜の樹の下に』をも連想させる句との評もありました。あるいは、「屍体」とまで言わなくても、「宿神(しゅくしん)」(小洞に住む神の名)か何かの存在を感じたか・・・。「畏れけり」の措辞が的確。手練れの作者の秀句です。
次回は5月27日、兼題は田村昌恵さん出題の「蜘蛛」です。兼題1句と当季雑詠2句をご用意ください。また、当句会への新規入会あるいは体験参加希望の方は、鎌倉稲門会事務局あてメールでお問合わせください。
【今月の高得点句(同点句は兼題優先)氏名は俳号 (原句のまま)】
(8点句) 種ばれの卒寿の手品山笑ふ 前川たく
「おすわり」に犬も子も座す花筵 田村昌恵
(6点句) 散り際のかくも美し花筏 浜崎かづき
(5点句) 囀りに和する読経覚園寺 田村昌恵
老桜の闇の深さを畏れけり 渡辺伊世子
(3点句) 来年もこの花見むと言ひし母 田村昌恵
遠足の子ら一団のつむじ風 浜崎かづき
居酒屋を出て駅前の遅日かな 吉崎明光
手術終へ深く息吸ふ夏近し 藪野詠子
シェパードのごとく遠足児らに添ひ 前川たく
(吉崎明光記)