第74回「りんどう句会」報告
(2023年7月31日(月)鎌倉芸術館にて開催)
今回も全員参加(内2名はメール投句)、合計45句の投句がありました。当月の兼題は藪野詠子さん出題の「風鈴」。風通しの良いところに吊るし、その音色に涼気を楽しむという本意の夏の季語です。
今回も合評の場ではそれぞれの句について活発な意見交換が行われましたが、特に、千葉ふみこさんの<風鈴の音絶え瀬戸は波畳む>の句について話題になりました。愛媛県ご出身の千葉さんが、瀬戸の夕凪の状態を的確な措辞(詩歌における言葉の使い方)を使用して詠まれた佳句です。
なお、この句では、「波畳む」の解釈が分かれました。この語をWEBで検索すると、「波畳む」を使用した例句として、「波がおさまって静かになる」と解釈できる句と、「波涛を畳む」と同意の「波がさかんにわきあがって、うねりよせるさま」と解釈できる句と、両方見られました。
私自身、選句の際にこの句を「前者の意」と捉え、一旦特選に選んだのですが、広辞苑にない「波畳む」を後者の意味と捉え直し、「風鈴の音絶え」との不整合性ありとして選外としてしまいました。しかし、作者から、類語辞典で「凪」の類義語として「波畳む」を見つけたので使用したと説明いただき、それを尊重して評価するのが妥当と思われました。私の迷いでしたが、やはり特選にすべき句だったと思います。
もし、本欄の読者で、「波畳む」の意味についてご教示いただける方があれば、宜しくお願い致します。
鈴木金平さんの<気に沿はぬ風は無視して江戸風鈴>の句も、「江戸風鈴」がとても効いた面白い句として点を集めました。
また、最高得点句の、千葉ふみこさんの<病む人の手に汗の手をただ重ね>の句も、「汗の手をただ重ね」の措辞に、状況がしっかりイメージできるとの評が寄せられました。
なお、当日は句会終了後、発足満6周年記念を兼ねて、1年ぶりに暑気払いの懇親会を行いました。
次回は8月28日(月)、鎌倉芸術館会議室で13時から16時まで開催予定。兼題は「盂蘭盆会」(北村拓水さん出題)。兼題1句と当季雑詠2句をご用意ください。
当句会への新規入会あるいは体験参加希望の方は、鎌倉稲門会事務局あてメールでお問い合わせください。
【今月の高得点句(一部添削後。同点句は兼題優先)氏名は俳号】
(7点句) 風鈴や膝枕して耳掃除 吉崎明光
(5点句) 気に沿はぬ風は無視して江戸風鈴 鈴木金平
子かまきり一丁前の威嚇かな 田村昌恵
右左片蔭たどりたどり行く 高吉よしえ
白壁に空蝉五つ競い鳴き 藪野詠子
(3点句) 風鈴に出迎へらるる医者帰り 前川たく
草野球西瓜の浮かぶ金盥 田村昌恵
猛暑日や今夜はカレーと夫が言ふ 高吉よしえ
ががんぼはいづこに妻の後れ毛に 吉崎明光
(吉崎明光記)