「鎌倉歴史散策」事前連載読物第2回

 6月11日催行予定の「鎌倉歴史散策」の事前連載読物第2回です。

上記歴史散策は4月下旬ころにご案内と参加募集ができる予定です。

末尾の予告もご覧ください。                        

                          副会長・幹事長 小林敏二

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    落魄の一族  ――和田一族 先祖語り―― (第2回)

                            和田家30世 和田高明

 後三年合戦後、源氏の勢力は関東一円に広がりを見せましたが、惣領家の勢力は凋落するばかりでした。義家の次男義親が西国で乱をおこし、三男義国は常陸国で叔父義光と私戦を演じ、惣領となった四男義忠が暗殺されてしまったのです。義忠暗殺の犯人と目された義綱は追討を受けて滅亡しましたが、真犯人はその弟の義光でした。彼は真実の露見を怖れて東国に下ったのです。このように源家の内紛で勢力は衰えました。その後惣領となった為義も都での勢力挽回はなりませんでした。しかし、為義の嫡男義朝は、東国において源氏勢力の回復に努め、それを全面的にバックアップしたのが三浦一族でした。上総・安房で両者の所領が隣接し、三浦義明の娘が義朝に嫁いで後に鎌倉悪源太と称される義平が生まれるなど、地縁血縁の関係で、源氏と三浦氏は共存関係を深めていったのです。義朝は千葉一族の内紛を機に上総に勢力を伸ばし、波多野氏の娘を嫁にして西相模にも勢力を伸ばしました。波多野・中村との血縁関係は三浦氏も並行して行われました。

 源義朝と共に大庭・鵠沼郷に圧力を加えた三浦党は、杉本義宗(三浦義明の長男)を筆頭に鎌倉に進出、杉本城を根拠地としたのです。現在の杉本寺の地です。

 東国に地盤を築いた義朝は勇躍上洛して行きました。しかし、入れ違いに東国に戻ってきたのは、義朝の弟義賢でした。彼は秩父党と共に急速に武蔵国に勢力を伸ばしてきたのです。苦労して義朝が拡げた勢力範囲を義賢が切り取る形になったのです。後を託されていた義朝の嫡男義平は、出陣すると電撃的に大蔵館(現在の埼玉県嵐山町大蔵)の義賢の首を挙げてしまいました。

 三浦氏は秩父氏と強固な血縁関係を結んでいましたが、源氏との関係を重視して、敵対する関係となってしまいました。以下の系図にある通りです。

┌―――――――――三浦義明 ――┬―杉本義宗―――和田義盛

|          ║      ├―三浦義澄―――三浦義村

 └―女(重弘母)┌― 女(義宗母) └― 女(重忠母)

         ├―秩父重隆      

・秩父重綱――┴―秩父重弘―――――畠山重能―――畠山重忠

 秩父襲撃の時、三浦党を率いていたのは義澄でした。義明も義宗も共に直接手を下し難い繫がりだったからです。

次に三浦党が狙いを定めたのは、安房東岸の長狭氏でした。安房西岸から進出を図る姻戚の安西氏に助成して勢力拡大を図った三浦党は、長寛元年(1163)秋、房総半島を回り込んで朝夷郡から敵前上陸を試みたのです。しかし、事前に察知していた長狭常伴は矢の雨を見舞い、先頭を走っていた杉本太郎は格好の標的となってしまいました。作戦は失敗し、瀕死の重傷を負った太郎義宗は再起不能となったのです。彼はこれから16年後、自刃して果てます。このようなことがあり、三浦党の次代惣領は、太郎義宗ではなく、次郎義澄に移ったのです。和田一族の悲劇はここから始まりました。

源氏略系図

・頼信―――頼義―┬―義家―┬―義宗[早世]

         |    ├―義親―――為義―┬―義朝―――頼朝

         |    |         ├―義賢

         |    |         └―行家

         |    ├―義国―┬―義重(新田)

         |    |    └―義康(足利)

         |    └―義忠

         ├―義綱

         └―義光―┬―義業―――昌義

              ├―義清―┬―清光(武田・一條)

              |    └―遠光(秋山・小笠原・南部・安田)

              └―盛義(平賀・大内)

  4②1衣笠城址.JPG 4③1鐙摺城址.JPG  三浦一族系図.pdf   
 衣笠城址(横須賀市衣笠町)葉山町堀内  
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                                <以下次号>